10th Day 「折り返し」

9月23日

5:30起床。

あたりは薄暗い。まだ日の出前だろうか。雨は夜のうちにやんだみたいやけど、相変わらず空は一面雲に覆われてる感じなので太陽が出てるのかどうかわからない。今日も雨道中を進まなあかんのかなぁ。とりあえず荷物を出してテントをたたむか。屋根の下だったのでそんなに雨には濡れずにすんだやろ…ん?なぜかかなり濡れているぞ?屋根に入らんかった端っこはともかく、てっぺん付近まで。あ、この屋根、雨漏りしてる…。昨日の晩、ウトウトしてたら変な雨音がしてて何やと思ってたんやけど、正体はコレか!雨に濡れてると、テントたたみにくいよ〜。しかも雨の分、若干重くなってる気がする…。あ〜上り坂しんどくなるなぁ…っていかんいかん。昨日、自分の甘さを思い知ったばかりなのに、またすぐ楽したいとか考えてる。これも試練の一つ。乗り越えてナンボなんやから。

なんだかんだでテントもたたみ終えて荷物もまとめて、昨日の残りのパンで朝食。ふと見ると、広場内の別の屋根のある場所にテントが。この人もお遍路なのかな。バイクや自転車は見当たらないので歩きっぽい。お互い無事に旅ができるよう祈りながら6:30出発。

R56の上より。周りの山々にも濃い靄がかかっている。
おなじみ国道56号に乗り、北へ。もうずっと56号ばっかり走ってるような気が。いったいどこまで続いてるんや、56号って…?軽い上りをどんどん進む。全長1,117mの鳥坂トンネルを越えて、大洲市へ。トンネル入るまで雨は降ってなかったのに、トンネル出ると何故か雨。たった5分間で別世界。トンネルのある鳥坂峠は標高500m。トンネルをはさんだ山の反対側では全然天候が違うんやな。さすが山の天気は恐ろしい。しかも雨が霧みたいになって、10mくらい先からは真っ白な世界。まるで雲の中を自転車で走ってるみたいだ。とりあえず昨日の雨でまだ湿気てるカッパを装着。こっから下りなのだが視界が悪くてスピード出すとかなり危険。結構車も走ってるんで怖かった…。

坂を下りきったあたりで、北只交差点に出る。ここで大洲道路という自動車専用道との分岐があり、気をつけないとそのまま大洲道路に進入してしまいシャレにならんことになってしまう。1つ前の分岐で大洲道路を回避して、再度56号へ復帰。大洲市役所を越えたあたりから、雨が強くなってあっというまにドシャ降りに。途中の電気屋の軒先で雨宿りしてみるがやむ気配なし。はぁ〜やっぱり今日も雨ですか…。覚悟を決めて走り出す。と思っていたらやんでくる。どないやねんな。

鳥越交差点を越えて内子町へ。ただここが高速の降り口みたいで分岐がいっぱいな上に、工事してるもんやから、どっちいったらええのかサッパリ。方向オンチの僕からしたら、勘弁してよと叫びたくなる。とりあえず適当に進んでみたが、お、珍しく正解。死んでも治らんはずの方向オンチも旅を通じて少しは改善しているのだろうか。かなり荒療法やけど。

国道379号との分岐を目指してR56を北上。天気のほうは大分回復してきた。道の駅内子フレッシュパークからりにて、長らく走ってきたR56からようやく脱出。R379へと進む。山沿い川沿いにくねくねと東へ走る。トンネルもあって山に入っていく感じだが、そんなに極端なアップダウンはなく、まぁこのぐらいなら大丈夫。ただ道中何ヶ所か道路工事をしていて、道がガタガタ。しかも雨のせいでぬかるんだ泥が跳ねて服がめちゃ汚れる。実は自転車に泥はねついてないんよね…。ちょっとへこむ。とりあえず一本道なので前に進むしかない。

1時間半ほどR379を進んで小田町に入る。ここで突合というR379かR380かの分岐。四十四番に向けて、険しい山道のR379経由か、比較的緩やかだが若干標高が高いR380経由かの選択を迫られる。悩むところだがR379は基本的に歩きのルートで、あくまで自転車でも「行けないことはない」というぐらいのレベルらしいので、ここは安全にR380経由をチョイス。どっちにしても600m近い標高の峠越えを余儀なくされるので、僕からしたら十分難所なんですがね。山に入ると自販機があるかどうか微妙なので、近くのスーパーでドリンクを購入していると、一人自転車遍路の人が先に進んでいった。お、意外と自転車の人も多いんだな〜。これで4人目かな、自転車遍路と出会うのは。

燃料補給(アクエリ×2、お茶×1)もすませて、いざ上り坂へ。上りの到達点は標高600mの真弓トンネル。約9kmの道のりだが、スピードは平地の半分として1時間半くらいかかるかな。最初はやっぱり坂自体はそんなにきつくない。予想してたより緩やかなぐらい。お、いけるんちゃう?旅を通してちっとは体力ついてきてるんかな?なんて思っちゃったり。まぁ、やっぱりそんなに甘くはないわけで。勾配云々より9kmの上りは長いです。調子に乗ってる分、突きつけられる現実は重くなるんですね…。結局途中からいつものように、自転車押して歩くことに。途中徒歩の遍路道があって、これをいけばかなりショートカットできるんだろうなぁなんて誘惑に襲われるけど、相当な山道っぽい。う〜ん、自転車捨てていくわけにいかんし…。激しい葛藤。まぁここまで一緒に来た自転車捨てるなんて選択肢はありえへんし。とにかくこの先に待つはずの下りを目指して頑張るしかない。下りが楽だとは限らないことも学んだけどね…。

ヘアピンカーブをくねくね曲がって、ようやく真弓トンネル到着。なんか苦労して上ってきただけあって、トンネルの入り口がすごく大きく感じる。でけ〜って。後で写真とか見るとそんなに大きくはなかったんやけど…。やっぱり自分の足でたどり着いたっていう達成感が目にする風景を変えるんですね。

トンネルを抜けると一気の下り。今度は同じく9kmの道のりを下って、落合交差点の三叉路に。こっからR33を北上。しばらく走るとうどん屋が並ぶ。そういえば時刻もすっかりお昼。この辺で昼食にしよう。店に入るとうどんをゆでてる湯気がたちこめ、うどん大好き少年の僕にはたまらない。メニューを見るとなにやら名物「しょうゆうどん」がおすすめだとか。迷わずオーダー(温かいver.)。ここでしょうゆうどんの食べ方をご紹介。@まず大根をおろして(自分で)Aおろした大根をうどんにぶっかけてBネギ、ゴマ、しょうがの薬味を入れてC特性生醤油をたっぷりかけてD最後にレモンをしぼってEいただきます。お味は絶品。つるつるとしたのどごしと大根の辛味・特性生醤油のコクの深さが絶妙のマッチング。途中大根を追加しながら自分好みの辛さに調節できるのもおもしろい。ぺロリとたいらげてお店を出ようとすると、空になったペットボトルに水を入れてくれた。久万町は町といっても標高は400mを超える久万高原に位置する。水道水でも山の湧水を取ってるだろうから、水が美味い。都会とは違うね。やっぱり今後の人生住むところに、水がきれいっていう条件ははずせないわ。

お店のおばさんに道を丁寧に教えていただいて、四十四番へ。再び少し山中へ入る。札所に近づくにつれ、日差しが杉の木々に遮られて昼だというのに薄暗く、標高のせいもあるだろうがひんやりとした空気だ。自転車を徒歩道の手前に置き、長い坂を歩いて上る。13:41旅の折り返しともなる四十四番札所大宝寺到着。お寺自体も風情があるが、感動するのは周りを囲む杉木立。樹齢何年だろうと思わせる大木が堂々とした風貌で何本も立っていて、そんな木々に囲まれると街とは分離されたすごく静かな空間にいるように感じた。

参拝を終えて自転車まで下る。車のおじさんに次の四十五番までの道を確認させてもらって出発。さらに少しだけ上り坂を超え、峠御堂トンネルを抜けて後は四十五番まで一気の下り。下りの途中、国民宿舎古岩屋荘があり、今日寝場所がなければここで泊まろうかな。ひたすら下って四十五番の駐車場に到着。ここからは車もバイクも先には進めず、ロープウェーやケーブルカーもない。老若男女問わず、すべての参拝者が長い石段と上り坂に臨まなければならない。そういえば六日目の塚地休憩所でお会いしたおばあさんが、四十五番岩屋寺への山道は大変だと言っていたのを思い出した。歩き遍路の人にとってももちろん大変だが、ほとんどの札所には境内までの道路や駐車場が整備されているという現代遍路で、車やバスツアーで回っている方たちにとっては、道中最大の難所になるかもしれない。

四十五番岩屋寺境内。う〜ん、写真だと分かりにくいかな…。
麓には地元の土産や仏具を売っている店が並ぶ。山寺にしては参拝者も多く、この地域の名所の札所となっているようだ。赤や青の幟が並ぶ坂と石段を繰り返し上っていく。長い長い上り。僕も正直息が上がるぐらいの道。年配の方も多くいらっしゃったが、やはりきつそうだ。塚地のおばあさんの言葉を実感する。結局20分ほど上り続けただろうか。15:08四十五番札所岩屋寺到着。山門をくぐりさらに石段を上って本堂へ。ついに本堂にたどり着いたが…目の前にたたずむ光景に驚愕。すげぇ…。本堂の上には覆いかぶさるように巨大な岩壁が迫っていて、今にも本堂全体を飲み込んでしまいそうな威圧感だ。自然の作り出した岩壁にも圧倒されるが、こんな場所にまで札所を建立しててしまうという人間の努力と信仰心には頭が下がる。聞けばこの岩屋寺、山全体が本尊とされているそうだ。大師堂の大きさは、ここに所以しているらしい。本堂の横の岩壁にははしごがかかっており、岩のくぼんでいる部分に通じている。窪みは行場とされて、登ることも可能だが、中には降りるときに落ちてしまって骨折した遍路もいるんだとか。登ったら降りなあかんということをお忘れなく…。

参拝を済ませて、この絶景(?)を名残惜しみながら、山を降りる。時刻は午後3時半を回っている。次の浄瑠璃寺まではちょっと間に合いそうにないが、まだ明るいのでもうちょっと進んでおきたいところだ。今いる県道12号を下ればキャンプ場があり、道の駅もすぐ近くにあるというのでそこを目指すことに。これが判断ミス。いったん南下するルートは、かなり遠回りになり、本来なら四十四番から来た道を引き換えしてR33に戻るのが一番正しい道順だということに後ほど気づく。

12号を南へ南へ。基本下りなんだけど、予想以上に遠い…。しかも途中から雨がパラパラ。結局1時間半ぐらいかけて、なんとか美川村役場裏のキャンプ場に着く。あれ?キャンプ場って…ただの川原ですよ…。十分テントを張ることはできるんだが、雨が降ってきたからなぁ。いうてもここは標高400mの山中。夜のうちに本降りになったりしたら、水位が上がって流される恐れもあるし…。今夏は異常気象なのか、豪雨の災害が多いだけにそのへんは神経質になってしまう。無駄に危険を冒すことはできない。ここでの野宿はあきらめよう。

寝床を探して、すぐ近くの道の駅みかわに向かうが、野宿できそうな東屋にはすでに野宿の先客がいて、ここも断念。しょうがなく引き返し、喫茶店を発見。ここで野宿できそうなところを聞いてみることに。店内にはおっちゃんがいっぱいいて、にぎやかだ。事情を説明すると、皆さんえらい親身になってあーだこーだと言ってくれる。中には、「今晩泊めてやるから、明日ウチでバイトせんか?」なんてお声をかけられたり…。結局美川村役場前のバス停で泊まることをおすすめしてくれた。お遍路さんもよく野宿に利用しているようで、屋根もあるし雨もしのげると。皆さんにお礼を言ってここでテントを張らせてもらうことに決定。そばの売店で夕飯のパンを購入してバス停へ。雨も相変わらず降っていて、雨を防げるだけ助かる。

午後6時に最終のバスが通過するのを待って、テントを張る。今日で旅も半分を過ぎた。折り返しとなる今日、今までの旅を振り返ると、改めてこの旅の長さを感じる。四十五ヶ所回っただけでも、すごい色んなことがあった。いろんな人とも出会えたし。やっぱりしんどいけど楽しいな、お遍路。明日からの旅、後半戦も楽しみだ!頑張っていこう〜。

19:30就寝。



  納経    600円(300円×2ヶ所)

  宿泊    0円
  入浴    なし
  洗濯    なし
  移動    なし
  食事朝  300円(パン+おにぎり)
      昼  450円(しょうゆうどん)
      晩  300円(パン)
  その他  なし


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