13th Day 「後悔」

9月26日

5:45起床。

早朝から湧水を汲みに軽トラが来ている。夜の冷え込みのおかげで、朝の水の方がきれいだったりするのだろうか。水汲みの方々に並んで湧水で顔を洗う。キンキンの冷水で一気に目が覚める。テントをたたんでいると、おじさんもお目覚めに。先に出発させていただくと挨拶。昨日の15歳の少年と納経ギリギリだった青年がどうなったか少々心配ではあるが、6:30出発。

昨日苦しんだ坂道を一気に下る。朝の風が気持ちいい。昨日の雨雲は少し残っているようだが、今日は雨は大丈夫っぽい。R11に出て東へ。昨日夕飯を買ったコンビニで朝食。半額のたこ焼きを購入。

20分ほど走って7:10六十一番札所香園寺到着。…って、目の前にはめちゃデカイ鉄筋の四角い建物が。あれ?これが札所?一瞬場所を間違えたかと思ったが、間違いなくここが六十一番。今まで巡ってきた60の札所もそれぞれ個性に溢れていたが、ここはまた、まったく異なる雰囲気を持っている。時代とともにお寺の概念も変化しているということだろうか。本堂の荘厳さというか、半ば威圧感とも思われる感じを抱きながら参拝へ。まだ午前7時過ぎというのにすでに参拝に来られている方がいた。線香を供える場所がわからず困っていると、声を掛けていただいた。この方は何回も遍路を回っている方らしく、お話しすると、ここの本堂の2階にはすごい本尊があるから行ってみるといいと教えていただく。横についている階段を上がって2階の本堂内陣へ。…何じゃこりゃ。屋内にはずらりと客席が設置されていて、コンサートホールかと思うような感じ。とてもお寺の中とは思えない。そしてさらに驚愕を受けたのが、客席の前に佇む巨大な黄金の大日如来像。マジデカイ。六十一番に来たからには一見の価値有り。

吉祥寺にある成就岩。マイ杖をお持ちの方は是非お試しあれ。
R11をさらに東へ。六十一番→六十二番は1km弱。5分程度走って、7:37六十二番札所宝寿寺到着。小松駅のすぐ近くにある宝寿寺は、駅の建設や道路の拡張などで何回も微妙な移転を繰り返したという札所らしい。そのせいか境内もこじんまりとした感じがした。続く六十三番もここから約1.5km。7:51六十三番札所吉祥寺到着。素朴な感じの境内に不思議な石を発見。成就石というこの石は、目を瞑った状態で願い事を唱えながら遍路が持っている金剛杖を石に空いている穴に通すことができれば願いがかなうという。試してみたいところだがマイ杖を持っておらず残念。次来る時は是非金剛杖を持ってこよう。

次の六十四番も3kmほどの道のり。この辺りは札所が固まっているので、目標が見えることで、なんとなく回ってて余裕が出る。8:23六十四番札所前神寺到着。約90分で4ヶ所というハイペース。本日の目標六十七番まで行けるかな。

とは言っても、次の六十五番まで実は約50km。しかも標高は350mの山寺。難所が愛媛最後の札所として待っている。お昼までに着ければいいが、やや厳しいか。ひたすらR11を東へ走る。新居浜市、土居町を抜け、今年4月に誕生した四国中央市へ。この四国中央市、名の通り四国のど真ん中に位置しており、愛媛・香川・徳島・高知の4県全てに隣接しているという唯一の市だ。徐々に香川に近づいてくるとともに、旅も終盤に差し掛かっていることを実感する。

四国のど真ん中と聞くと、すごい山奥の秘境みたいなイメージがあったがそんなに山という印象は無い。軽いアップダウンはあるけどしばらくは街中を走るという感じで、比較的スムーズに距離をかせぐ。ただ50kmの道のりはそう簡単ではない。3時間ほど走り続けただろうか。ようやく三角寺山麓の戸川公園にたどり着く。近所のおじさんに道を教えていただき、標高350mの三角寺を目指す。

坂を上っていくが、序盤は山深さを感じない。普通のお家が並んで一見閑静な住宅街。ただこれが相当の急坂。かなりきつい。自転車は押して上る。天候も今日は快晴で、ここ数日間で最もいい天気。時刻もお昼過ぎで暑い時間帯。坂を上るにつれ汗が吹き出す。道は曲がりくねっているが、遍路道表示が出ていて迷わずに進むことができる。しかし、ある程度登ったところで「土砂崩れのために全面通行止め」の看板が。一応その横には遍路のための迂回ルートを図示してくれており、その道へ。やはり今夏の集中豪雨の影響は未だ随所に見られるようだ。きつい上りはまだ続く。休憩しながら上っていき、ようやく残り2km地点から多少緩やかに。ちょっと楽。

麓から約40分。ようやく三角寺の駐車場に着く。自転車を置くが、境内までは長く急な石段。これを上って、12:41六十五番札所三角寺到着。大きな釣鐘がつけられている山門をくぐると境内は結構広い。お参りを済ませ、納経へ。納経所でお寺の方に、続く六十六番への道を教えていただく。歩きならば境目トンネルから遍路道へ抜ける道があるというが、自転車ということで別格十六番萩原寺からロープウェイの道も教えていただいた。今日の目標の観音寺市まで行くと考える時、雲辺寺山を自力で登って往復するのであれば時間的には厳しい、というかほぼ不可能。旅の出発前は、ロープウェイを使うか迷っていたが、結局太龍寺で使ったため雲辺寺でも利用させてもらうことを決断。駐車場前の急坂を一気に下り、三角寺を後にする。これで徳島、高知、愛媛と3つの道場の札所を全て回り終えた。残すは香川にある23の札所を残すのみだ。

10分ほどの下りでR192に合流。一旦西に向かい、再びR11を北東へ。海沿いを1時間ほど走り、13:48香川県到達。いよいよ最後、涅槃の道場・香川に入った。香川県に入ってすぐ道の駅とよはまがある。ここでしばしの休憩。あまりゆっくりもしていられないので、パンで軽い昼食をとり出発。姫浜交差点で、R377に入ってまずは萩原寺を目指す。

萩原寺に着き、ここからロープウェー乗り場へも結構な上り坂が待つ。今日は移動距離が長かっただけに現時点で体力的にかなりきつい。乗り場までの距離も意外にあって、なかなかたどり着かない。それに、昨日までの天候がうそのような晴天でかなり暑い。体力の消耗も激しい。できれば3時の便に乗りたかったが間に合わず、15:10に乗り場到着。20分の便に乗る。

時間になりロープウェイに乗る。今回乗った便も乗客は僕一人だ。麓はそうでもなかったのだが、登っていくにつれて雲が出てきて辺りは真っ白に。またしてもゴンドラ内からの景色は見ることができなかった。今日は快晴なので絶景を期待したが少々残念。さすが山の天気はわからないものだ。この辺りは年中こんな風に雲が広がるのだろうか。雲辺寺と名付けられたのもわかる気がする。

標高900m地点での徳島-香川の県境。
10分ほどで到着。乗り場から降りたらすぐ地面に徳島と香川の県境を示す線が引かれてあった。標高900m地点の県境。めったにお目にはかかれない。何故こんなところに県境があるかというと、実はこの雲辺寺、香川県第1番目の札所とされていながら、建っている住所は徳島県の三好郡。なんと一時的に徳島に帰ってきたのだ。そのまま境内へ進む道を歩き、15:40六十六番札所雲辺寺到着。境内には何やら神秘的な音楽が奏でられていた。個人的には標高が高いだけに静かな空間を期待していたので、これまた少し残念。

雲辺寺境内の五百羅漢像。圧巻。
ロープウェーで登ってきたとはいえ、この空間は心地よい。標高900mなんてそうそう来られるところではないし、先を急ぐ気持ちはあるが、しばらくここでまったりしたいという気持ちも。どっちにしろ下りのロープウェーの時間が来るまでは降りられないので、境内をウロウロ。広い境内に並べられている五百羅漢像は圧巻。よく見ると一体一体名前がついているようだ。この中には必ず知人に似ている像があるのだとか。今度来る時はそれを探してみよう。ロープウェー乗り場に戻り、お茶をお接待してもらった。

下りもロープウェー。太龍寺の時のように自転車も上げて、下りは自転車で下ることもできるのだが、時間を考慮してロープウェーで往復する。

山麓駅から一気に下る。時刻は午後4時を回っている。間に合うか?萩原寺を抜け、そのままの勢いで六十七番へ向かう。R377を北東へ。畑が広がり、田舎の香りがする道を抜けて16:38六十七番札所大興寺到着。ぎりぎりセーフ。お参りをして納経に行く。もうお寺の方はお寺を閉める準備をしていたが、何とか納経をしていただいた。

危ぶんでいた本日の目標はとりあえず達成。今日は親戚のおじさんに泊めてもらうため、電話で連絡。とある旅館で働いているというのでその職場へ向かう。30分ほどかけて到着。おじさんと久々の再会。ロビーでしばらく話していると、部屋は端っこの部屋しか取れてないけどいいやろ、と。ん?僕はてっきりおじさんの家で泊めてもらうと思っていたが、この旅館の部屋を取ってくれていたらしい。しかも宿泊代はおじさん持ち。それならそうと言ってくれてれば僕も多少遠慮したかも知れないのに、なんか申し訳ないなぁ…。部屋に案内してもらうが、めっちゃいいとこ。ホンマにこんなところで泊まっていいんですかと。浴場も露天風呂つきでなんとありがたいことか。ご飯も高級すぎ。しゃぶしゃぶとか出てきて、貧乏性で好きなものは最後に残すタイプなのでゆっくり食べてたら火種が消えるというミスを犯して結局半生の肉を食べたりと、贅沢の限り。たらふく頂いて、ホンマに他の遍路の方々に申し訳ない…。

部屋でゆっくりしながら今日1日を振り返ってみる。とりあえず六十七番まで回れたことは良かったけど、今になってなんか釈然としないというかすっきりしないというか、そんなモヤモヤした気持ちになった。こんな贅沢な宿を取ってる(しかも無料で)っていうのもあるんだろうけど、多分ロープウェーを使ってしまったことに対する後悔なんじゃないかなと。出発前は迷っていたといっても、できれば使わずに行きたいなと考えていたから、それについても申し訳ないっていう気持ちが出てきた。誰に迷惑掛けたわけでもないから、申し訳ないっていうのはちょっと違うかもしれないし、一応お寺も協賛して運営している参拝手段だから使ったことでバチが当たるなんて事も無いんだろうけど。結局自分の中で楽を選んでしまったっていう自責の念なんだろうな。遍路の醍醐味って色々あると思うけど、なんでこんなしんどい事やってんのかって言われたら、しんどいことが楽しかったりするからなんよね。それを、遍路を通して一、二を争う難所であるにもかかわらず、一番楽な手段を選んでしまったってことに、もったいないことしたな〜って。そう、今のモヤモヤを表すなら「もったいない」が一番しっくりくる気がする。終わってしまってからでないと気づかないところに自分の弱さがあるんだろうな。なんか完全に自己満足論やけど、自己満足で何が悪い!ってね。とりあえず、この欠けてしまった自己満足を埋めるためにはどうしたらいいものかと考えると、答えは1つですね。太龍寺と雲辺寺、もう1回登り直す。もちろん歩いて。実は、2日目に焼山寺をご一緒したおじさんも以前遍路を回ったとき、太龍寺でロープウェーを使用したが、それを後悔して次の日朝一で戻って歩いて登り直したそうだ。自分で歩いて登った時の満足感はやっぱり違うよ、とありがたいお話をしていただいていたにもかかわらず、何も考えず太龍寺だけでなく雲辺寺でも楽を選んでしまい、結局後悔…。焼山寺でのおじさんに対しても申し訳ない。ただおじさんに出会ってなかったら後悔さえすることなく旅を終えてしまっていたかもしれない。遍路を自転車で回っている意義に気づかせてくれた、そういう意味でもおじさんには感謝しないとな。

いつになるかわからないけど、絶対太龍寺と雲辺寺は再度登ることを決意。明日は香川の街中へ入っていく。札所が結構固まっているのでかなり進むことができそうだ。目標は、いけるとこまで。朝は久々にゆっくりしようかな。

24:00就寝。



  納経    2100円(300円×7ヶ所)

  宿泊    0円
  入浴    0円
  洗濯    なし
  移動    2000円(雲辺寺ロープウェイ・往復)
  食事朝  300円(パン・たこ焼き)
      昼  300円(パン)
      晩  0円(旅館の夕食)
  その他  なし


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