1st Day 「出発×出会い×いやしの舎」

9月14日

5:00起床。

出発の朝が来た。いよいよ行くぞという感じとホンマに行けるんかいなという不安で準備を進める。一応大学でクラブの練習には2日前まで参加してはいたのでまったくの運動不足と言う状態ではないが、自転車に関しては完全に素人なのでどういう事態に陥るのやら予想不可能だ。旅行らしい旅行だってしたことがないし、アウトドアの経験だってほとんどないし・・・。

とやかく言っててもここまできて止めるわけにはいかない。通販で買った白衣と輪袈裟を身に着ける。見た目も一気にお遍路さんぽくなり、気持ちも引き締まる気がした。自転車の荷台にテントと荷物をくくりつけ、6:15出発。

実家をスタートしてまず目指すのは始まりの地、一番札所霊山寺。鳴門市にある霊山寺に行くには徳島の水源である吉野川を超えなければならない。四国三郎と呼ばれる大河川だ。橋を渡っていると朝日で川面がキラキラと輝いている。これはこの旅の写真第1号にふさわしいと思い、デジカメのシャッターを押す。が、画面には「電池残量がありません」。・・・。出発30分にしていきなり出鼻をくじかれた気分だ。てか前日に電池の確認ぐらいしとけよ・・・。しょうがないのであきらめて川を渡り、コンビニで電池を購入。これでOK。気を取り直して再出発。一番霊山寺を目指す。しかし、これが結構遠い。国道をまっすぐ行き県道に入ればいいので迷うことはないのだが、なかなか見えてこない。

8:00。ようやく一番札所霊山寺に到着。駐車場の脇に遍路用品店があったので立ち寄ることに。必要な分は通販で購入していたのだが、経本を購入するのを忘れていた。2種類あったが高い方を買った(200円だけ)。旅が終わるまで使うものだから、この方がありがたみがあるかなと思ったので。買い物を終えて参拝へ。大きな仁王門に一礼。ここで改めてこの旅の写真一枚目を撮る。やっぱり1枚目にふさわしいのは一番札所の写真でしょ、とか言い聞かせてみる。境内に入ると広々とした空間がひろがる。池には錦鯉が泳いでいたり、緑があふれる落ち着いた境内だ。ただ、境内に入ったはいいものの、何をしたらいいのかよくわからない。とりあえず納経所の立て札を見つけたので入ってみる。遍路用品がずらりと並んでいて、その奥でお寺の方に初めてとなる納経をしていただいた。手馴れた感じで納経帳に筆を走らせる。何を書いておられるのかは全然わからないが、なんとなく重みを感じる。この時、御影というそれぞれのお寺に祀られている仏のお姿を描いた紙をいただく。横に本堂があるというのでお参りへ。ローソクと線香を供えて、お賽銭と納札を納め、初の般若心経を唱える。初めてということもあり全然スムーズに読めず、つまりながらもとりあえず唱えきる。太子堂でも同様にお参り。最後に山門を出て一礼をし、わからないことだらけではあったが初めての参拝を終える。自転車を取りに駐車場へ行くと、若い男女二人組みが自転車を組み立てていた。このお二人も自転車で遍路を回るようだ。僕は先に二番札所へと出発させてもらう。

鳴門市ドイツ館。
二番札所に行くまでに鳴門市ドイツ館がある。年末の恒例行事となっている第九演奏が日本で始めて行われたのが実はこの鳴門市だという。幼い頃1度行ったことがあるがあまり記憶がなく、少し寄り道がてらに行ってみた。もちろん開館前で入ることはできなかったが、外観は異国情緒あふれていてあまり知られていない歴史を感じることができた。他の県でもこういった観光名所をまわる余裕があればいいなぁと感じてドイツ館を後にするが、結局寄り道らしい寄り道ができたのは、初日で体力的に余裕のあるこれが最後だった・・・。

二番札所極楽寺は霊山寺から近く、10分弱走って8:50到着。山門は霊山寺とはうって異なり、鮮やかな朱色に塗られていた。境内も落ち着いた雰囲気で、石段を登ったところに本堂、その上に太子堂があり、まだぎこちないながらお参りをすませる。駐車場のそばの納経所で納経をしていただく。

三番札所金泉寺は板野町の住宅街に入っていく。道が入り組んでいてわかりにくい。案の定住宅街に迷い込んでしまい、完全に道がわからなくなる。困り果てて地図を必死に見ていると自転車に乗ったおっちゃんが「三番で?」と声をかけてくれた。道がわからなくなってしまったと伝えると、なんと金泉寺まで連れて行ってくれた。白衣を着ていたのでお遍路だとわかってくれたのだろうが、四国の人間には遍路に対するお接待の精神が深く染み付いているのだなあと身にしみて感じた。お礼を言いおっちゃんと別れて、参拝へ。そこで京都から来たという年配のご一行と出会う。自転車で回っているというと、「若いのにねぇ。修行?」と聞かれてしまう。そんな立派な志ではないのだが、終わったとき多少人生観に変化はあればなぁと、まあ何かしら人として成長できてることを期待することにしよう。

続いて四番札所大日寺へ向かう。今まで平地を走ってきたが、四番は山に入っていく。それほど険しくなく自転車をこいでいけるくらいだがなかなか足にくる。しばらく登ると分岐に出くわす。どちらか迷っていると歩き遍路の男性がやってきた。二人とも道がわからず、どっちだろうと相談した結果左の道へ。自転車なので先に行かせてもらうと、200Mほど行った所で近所のおばさんに呼び止められ、「こっちちゃうよ!」と教えてもらいUターン。歩きの男性にもそのことを告げ先ほどの右の道へ。このおばさんに出会わなければ2人とも間違った道をかなり山奥まで進んでいたかもしれない。先は長いので無駄な登りは避けたいところ。感謝感謝。坂を登り、10:20四番札所大日寺到着。境内には歩き遍路の方が何人かいて休憩していた。坂道を歩いてきたのでけっこう疲れているようだ。昼が近づき気温も徐々に上がっている。水分補給はしっかりと行うことにした。

五番札所地蔵寺へは来た道をまっすぐ下るだけ。自転車遍路の最大の利点は下り坂だ。10:40、結局四番から五番までペダルをこぐことなく座ってるだけで到着。すぐ横にある奥の院には多数の羅漢像が祀られていて、縁のある故人に似ている羅漢が必ずいるとか。一度は拝観してみたい。ここで参拝を終え六番札所安楽寺へ向かおうとすると、体が震えてきた。何だろうと思い水分を取り木陰で休んでいても震えはひどくなり、手足の感覚もなくなっていく。なんかまっすぐ立ってるのかどうかもわからなくなってきた。熱中症か脱水症か、とにかくこれはヤバイと考えるがじっとしてても悪化する一方なので、「迷ったら押せ」の精神で六番へ向かうことにする。自転車をこいでいればそれほど震えは来ない、というか感じないので走っていると、セルフのうどん屋を発見。この時すべての謎が解けた。熱中症でも脱水症でもない。そう、腹が減っていたのだ。次へ次へという意識が強すぎて、腹が減っていることに気がつかなかった。完全なケアレスだ。休憩がてらここで早めの昼食をとる。1時間ほど休ませてもらって復活。再出発。

12:20六番札所安楽寺到着。昼食を取っている間に霊山寺で出会った自転車遍路のカップルは先に到着していた。境内は広く日本庭園のような落ち着いた雰囲気だ。ちょうど同時にバスツアーの団体参拝と出くわす。やはり年配の方が多い。団体で唱える般若心経は勢いがあるというか威圧感さえ覚えた。

七番札所十楽寺まではほんの5分程度。12:40到着。八番熊谷寺へ向かう途中歩き遍路の女性がいたので道を尋ねる。女性でも一人で歩いている方がいるのだなあと感心。軽い登りを越えて13:20八番札所熊谷寺到着。広々とした駐車場に自転車を置き長い石段を進む。なぜかずっとお経の様な唄の様な声が流れていた。一体何だったんだろう・・・。参拝を終え次の九番札所法輪寺への道を確認していると、軽トラに乗ったおっちゃんに声をかけられる。出身や大学、就活の事など色々と質問された。というかこちらから話を切り出せないような猛烈な勢いで話しかけてくる。今日の宿は決まったのかと聞かれ、十番の近くのキャンプ場で寝るつもりだと答えると、「ほんなとこで泊まらんと、鴨の湯のとこまで行け」と怒られる(?)。何でも遍路専用の小屋(いやしの舎)があり寝かせてくれるとのこと。少々距離があるが時間的にも余裕がありそうだったので予定を変更して鴨の湯を目指すことに。

八番札所熊谷寺仁王門。
軽トラのおっちゃんに九番までの道を教えてもらい、出発。坂を少し下りたところに熊谷寺の仁王門があり、自転車と記念撮影。その大きさに感動を覚える。そこからずーっと山を下って、ひたすら田んぼの中を走る。本当に見渡す限り田んぼしかない。大阪みたいな都会では見られない光景にすごい開放感を感じる。やっぱり住むなら田舎やな〜、と思いつつ自転車をこぎ、14:10九番札所法輪寺到着。


わかりにくいですが豪雨です…。
十番札所切幡寺までの道は細い道で途中でわからなくなってしまい地図を小まめに確認しながらようやく十番へ通じる上り坂に辿り着く。しかしここで天候が怪しくなってきた。ぽつぽつと雨が降ってきた。ほんとにぽつぽつとだったので上り切るまで何とか持ちこたえてくれと祈りながら坂を上る。しかしこの坂が激坂でとてもこいで登れるものではなく自転車は押して上ることに。なんとか坂を登り切り、最後の石段の手前まで来たときに一気に雨が本降りに。ちょうどテントを張って屋台をしているおばちゃんがいたのでそのテントで雨宿りをさせてもらう。夕立だと思っていたが一向に止む気配はなく雷まで鳴り出す始末・・・。結局1時間半以上足止めを食らう。雨が弱まった隙を見て、333段の石段を登り16:20切幡寺境内へ。ギリギリで納経を済ませテントへ戻る。雨宿りさせていただいたお礼に名物絹あめを購入。雨も上がり、坂を一気に下ると八番で出会った軽トラのおっちゃんと再会。なんという偶然。ここで再び鴨の湯への道を教えてもらう。近くの沈下橋を渡れば近いらしいが、先日の台風で水没してしまい渡れないとのこと。迂回して行くことに。

宿泊させていただいた「いやしの舎」。
本日2回目の吉野川越えで鴨島町へ。あたりもだいぶ暗くなってきたが18:30鴨の湯到着。予約も何もしてなかったので不安だったが、館内に入ると何も言ってないのに宿泊の手続きをしていただく。今日は僕以外で2名の方とご一緒する。1人は東北の大学院生の方。もう1人はなんと90歳代の方。何度も歩いて回られているというベテラン遍路さんだ。お二人とも歩きで回られている。宿泊させていただくのは3畳1間の小屋。3人であれば十分な広さだ。電気もあるし洗濯機もあるし、なにより畳で寝られるというのが本当にありがたい。お二人にご挨拶し、荷物を置きお風呂へ。本来なら入浴料450円だがお遍路さんはお接待価格360円で入浴させてもらえる。1日走り回っての風呂は本当に生き返る気分だ。体の芯まであったまる。夕食はすぐ前の食堂でカツ丼をいただく。小屋に戻って3人で旅についてお話。特に90代の方の経験談は旅を続ける上で勉強になる。明日登る十二番焼山寺も難所だが高知に入ってからが本当に厳しいということだった。アップダウンもあるが、ひたすら海沿いの一本道を行くため景色がまったく変わらないのが精神的に参ってしまうと言う。しかも札所間が100km近くあるため一日歩いて1つも回れないなんてことにもなりかねない。僕は自転車なので歩きの方に比べれば多少は楽かもしれないが肝に銘じておこう。

21:00頃消灯。が、なぜか眠れない。朝5時に起きて晩6時まで自転車で走り回って風呂に入ってカツ丼を食って、眠れない。意味不明。東北の院生の方も眠れないとのことで外のベンチで二人でトーク。今の悩みや旅に来た理由など色々と話してくれた。ほんの数時間前に出会った人とこんなに語り合ったことは今まであったかなぁと考えるほどだ。ふと空を見上げるときれいな星空が広がっていた。久しぶりに星空っていうものを見た気がした。空を見ながら二人とも住むならやっぱり田舎がいいという話をして今日は寝ることに。明日は最初の難所焼山寺攻めだ。

23:00就寝。



  納経    3000円(300円×10ヶ所)

  宿泊    0円
  入浴    360円(お接待価格)
  洗濯    200円
  移動    なし
  食事昼  250円(うどん)
      晩  840円(カツ丼)
  その他  700円(経本)
          300円(絹あめ)


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