4th Day 「修行の道場〜高知〜」

9月17日

5:30起床。

ちょっと朝が寒くなってきた。布団をたたみ、昨日の残りのパンで朝食。皆さんは持参のコンロと飯盒で米を炊いている。さすが旅慣れしていらっしゃる。というか米を持参しているのに驚き。僕なんかシャツ1枚持っていくかどうかで悩んでいたのに、すごいタフだ。テレビで天気予報を見ているとこれから天気は下り坂の模様。困ったな…。今日は昨日の遅れを取り返さなければならず、あまりゆっくりしていられない。皆さんにご挨拶し、6:15一足先に出発。

当初の予定では二十七番と二十八番の間にある月見の山こどもの森での宿泊を考えていたが、そんなん絶対無理(冷静に考えて、予定通り行っててもこの目標は厳しかった)。なので、もう全力出して行けるとこまで行くことに。以前ある先輩に言われた言葉を思い出した。「予定なんて狂うためにある」。今になってこの言葉のすばらしさを痛感する。今日はノープランでアタックだ。

二十三番まではトンネルと細かいアップダウンの繰り返し。そんなにきつい道のりではないが体力を消耗する。トンネル内は歩道が狭く危険。お遍路用にタスキ状の反射板を置いてあった。走っていると、とあるトンネルの手前に小さな休憩所発見。そこにアンケート用紙があり、この道はこうしてほしい、とか、ここは○○で危険だ、など遍路の目安箱となっている。反射板もこういった遍路の生の声を生かして置かれたんだろうなと、四国ならではの文化をここでも感じた。トンネルと坂を越えて7:34二十三番札所薬王寺到着。ここでバイクで回っておられる男性に出会う。

納経をすませ、次に目指すは二十四番最御崎寺。二十三番〜二十四番間は約80kmで、この途中徳島-高知の県境がある。高知にある札所の数は他の3県に比べかなり少ない。しかし東西に長い高知県において、それは各札所間の距離が一気に長くなることを意味する。札所が少ない高知が修行の道場と呼ばれる所以はこの点にあるのかもしれない。

国道55号線を南下。舗装された広い道で自転車としては走りやすいのだが、軽いアップダウンが延々と続く。海沿いではあるがすぐ逆側には山が迫っており、トンネルも多い。左に海、右に山、たまにトンネル。ずっと景色が変わらない。今のところ天気がいいので海側の景色は絶景なのだが、それでも景色がずっと同じというのは精神的にきつい。初日のいやしの舎でご一緒した方の言葉がよみがえる。しかし実はまだ徳島県内。高知に入ればさらに過酷な道のりが待っている。まずは高知との県境を目指す。

ゴロゴロ休憩所より。ごつごつした岩海岸が続く。
市町村合併により「海陽町」への生まれ変わりを進める海南・海部・宍喰の徳島県南端3町を走り、水床トンネルを越えたところで、10:30高知県突入。しばらく走ると室戸岬まで30kmの地点にゴロゴロ休憩所なるところを発見。屋根の下にベンチがあり、日陰で少し休ませてもらう。ここで途中で購入したクリームパンを食べていると、バイクに乗った年配の男性がやってきた。明らかにバイクからは異様なエンジン音がしていて、僕にはバイクが悲鳴をあげているようにしか聞こえないのだが、大丈夫なのか?このおっちゃんもここで休憩。お話しをすることになったが、このおっちゃん、感動を覚えるほど強烈な土佐なまりの持ち主。隣同士の県でここまで方言に差が出るのかと、やはり四国は奥が深い。以前、就活で訪問した職場の方が「四国4県は実は仲が悪いからねぇ」と言っていたのを思い出した。仲が悪いかどうかは知らんが、各県文化に大きな個性差があるのは間違いないようだ。必死で土佐弁リスニングを試みるが、結局解読できたのは半分が限界。「バイクのマフラーが壊れそうだ」「もう歳なので冷たいお茶は飲めない」ということをおっしゃっておられた(はず)。しばらくそんなやりとりをしていたら、おっちゃんが持ってきていた巻寿司を頂いた。ありがたく頂くと、「もう1つ食え」ということで2つもご馳走に。

おっちゃんにお別れを言い再出発。時刻も昼を過ぎ、気温が一気に高くなる。太平洋に面しているので日陰はなく、日差しがもろに体力を奪っていく。しかも海からの向かい風が吹き続ける。アップダウンも相変わらず続く。ふと考えてみたのだが、上り坂と向かい風なら坂の方が体力的疲労は大きい。しかし上り坂の場合、その後に下り坂が待っている。力学的に言えば蓄積させた位置エネルギーを下りで運動エネルギーとして放出することができる。一方、向かい風は前に進み続ける限り吹き続け、向かい風が終われば追い風に変わるとは限らない。結局自分で生み出した運動エネルギーを浪費されるにすぎない。何とも向かい風というのは理不尽だなぁと。ただ生きていく上では、上り坂よりも向かい風の方が多いのかもしれない。必死で頑張って結果を出しても、それに見合う見返りがあるなんてのは稀なんだろう。そもそも見返り前提で努力しようとするのが間違いなのかなと。浪費されるためだけにする努力も必要なのかなと。考えてみたり考えてみなかったり。何か向かい風に人生を諭された気がした。

夫婦岩。遠距離ver. 夫婦岩。至近距離ver.
岬まで13kmの地点に夫婦岩がある。遠くから見てもそのユニークな形に趣を覚えるが、いざすぐ前までたどり着くと、その壮大さに感動。この大きな岩が自然の力だけで作られたのかと、改めて自然の 力と途方もない長い年月の経過を思い知る。しばらく走るとバス停で休んでいる歩き遍路のおじさんを見かける。海沿いのこの道は自転車でも相当過酷だ。ましてや歩くとなると肉体的・精神的な疲労は計り知れないだろう。しかし昔は室戸岬へ通じる道はなかったらしく、ずっと浜辺を歩いていたという。遍路が海辺の石をゴロゴロと鳴らしながら歩いたという名残が、先程の休憩所の名に表れているそうだ。今は舗装された国道が通っている分、恵まれた時代かもしれない。先人たちの苦労を思うと頭が下がる。

最御崎寺手前の青年太師像。実際に見ると結構大きい。
さらに走ると大きな青年太師像が立っている。旅を続けるうち2、3体はこのような像を発見した。その先に広い駐車場があり、そこから二十四番へ通じる徒歩参道入り口がある。時刻は13:50。ここから1kmほどの山道を登るが、初日五番で味わった体の震えが再びやってきた。前回の教訓を生かし、おにぎり1個を常備するようにしていたので木陰でおにぎりドーピングしようとすると、猫が2匹トコトコと近寄ってきた。そして僕の方をじっと見つめる。いや、僕の持っているおにぎりの方を、と言った方が正しい。結構僕もいっぱいいっぱいなのだが、そんな目で見つめられると…。おにぎりを一口分あげると、それをペロリとたいらげて、これで終わりか、みたいな目で見られすぐトコトコと去っていってしまった。うう…なぜかちょっと切ない…。

気を取り直して、登山道へ。80km近く走ってきているだけに、この山道はきつい。少し登ったところで、先ほどバスを待っていた歩きのおじさんに遭遇。いつの間にか追い抜かれていたようだ。歩きではきつかったのでそのままバスを利用してきたとのこと。一緒に二十四番を目指す。15分ほどの登りだが、かなり長い時間に感じた。14:11二十四番札所最御崎寺到着。結局二十三番→二十四番で6時間かかった。参拝を終え下りへ。歩きはやっぱり下りがきつい。足への負担がめちゃ大きい。

30分ほどかけて15:26、二十五番札所津照寺到着。街中にある津照寺だが本堂へは長く急な石段を登らねばならない。これまた結構きつい。お参りを終え、納経に向かうとお寺の方と参拝の女性がお話をしていた。話題は一番札所について。八十八ヶ所回り終えれば高野山への参拝へ行くというのが通例だそうだが、一番札所だけは巡拝が終われば一番に戻ってきてお礼参りを行うようにと勧めているらしい。これは2回分の納経料を取ろうということで、他の札所はずっと反対しているとのこと。仏教界でも色々ゴタゴタがあるんだと知ったが、せっかく日常の束縛から解放された旅をしているのに、お金云々いう話は正直あまり聞きたくなかったなと残念に思う。

二十六番札所金剛頂寺へは16:19到着。納経を終えると16:30をまわっている。今日はさすがにここまでだな。さて、今日の寝床を探さねば。お寺の方に二十七番までの間に泊まれそうなところはないかと聞いてみるが、あいにく民宿が数件あるだけということ。ここで昨日同じ宿に泊まったおじさんに教えていただいたポイントを思い出す。東屋付きの駐車場があり、遍路がよく利用しているとのこと。二十六番から近いので今日はそこで野宿することにしよう。自転車を取りに行くと良心市を開いているおばさんに出会う。サツマイモを持っていくかと言われ、サツマイモは大好きだが生では頂いてもどうすることもできないので…。おばさんに野宿する駐車場までの道を教えてもらう。

5時をまわったくらいに吉良川町並み駐車場に到着。大きな東屋があり長椅子が並んでいて、すぐ横にきれいなトイレもある。野宿には快適な環境だ。幸いテントを張れそうなスペースもある。近所の方に一応野宿可能か確認を取ってみると、管理されているという町内会長さんのお家を教えていただく。宿泊の確認を取らせていただくためご挨拶に。情緒ある吉良川の町並みを入ったところにお家があり訪問すると、お家の中へ案内される。確認とご挨拶だけしようと思っていたのだが、お茶まで出していただく。ご主人とお話をしていると、会長さんである奥さんが帰ってこられた。野宿させてもらいたいとお願いすると、あっさり快諾。皆勝手にあそこで寝てるよ、というお話。晩御飯時で忙しい時間帯だったのでそろそろおいとましようとしたら、近くのパン屋さんで買ってきたと言う焼きたての食パンを持っていきな、と。いや、そんなつもりでお伺いしたわけではないので、と断るが、さらにペットボトルのドリンク2本まで袋に入れて渡される。本当に申し訳ないが、ありがたく頂くことに…。

駐車場に戻り、暗くならないうちにテントの組み立て。よく考えたらこの旅初の野宿。というか野宿自体が人生初体験。下がコンクリートなので結構痛い。シュラフを広げてその上で頂いた食パンを夕飯に。焼き立てだけにうますぎ。人生で食パンがこんなうまいと思ったことない。

明日最初に回る二十七番神峰寺へは標高430mの山登り。ここから約2時間半の距離。遅れを取り戻すため朝一7:00の参拝を目指すとなると…え、4:30出発…?ということで翌朝は4:00起きらしいので今日は少し早めに寝よう。

明日は9月18日か。ん?何か大事な日だったような気が…。

19:30就寝。



  納経    1200円(300円×4ヶ所)

  宿泊    0円
  入浴    なし
  洗濯    なし
  移動    なし
  食事朝  0円(パン(昨日の残り))
      昼  450円(おにぎり・パン)
      晩  210円(やきそば+いただいた食パン)
  その他  なし


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