6th Day 「お接待と国民宿舎」

9月19日

5:45起床。

快適な目覚め。布団で寝られたので疲れも大分癒された感じがする。シャワーも使わせてもらってサッパリな朝だ。布団とシーツをたたんで部屋の掃除。洗濯物は…ちょっと湿ってるが、何とか着れそうだ。雑記帳があったので簡単ながら僕の旅の経緯とお礼の言葉を綴る。ほんとにこの通夜堂をお借りできなかったらどうなっていた事か。心から感謝感謝。納経開始の午前7時まで時間があるが、僕はこれから昨日とばしている三十三番へ向かわなければならない。お寺の方がまだお見えでなかったのでご挨拶は三十三番参拝の後、戻ってきたときにしようということで6:25出発。

三十三番雪蹊寺までは30分程度。途中三十四番へ向かう歩き遍路のおじさんに出会い、「逆打ちですか?」とお声をかけられる。確かに遍路道を思いっきり逆走してるからそう思われるよなぁ…。昨日の経緯をお話し、三十四番までの道をお教えして、また後ほどということでお別れ。しばらくカクカクと道を曲がりながら進み、6:59三十三番札所雪蹊寺到着。朝一のせいか境内は人がおらず静か。お参りを終え納経へ向かうと鍵がかかっていた。年配のお寺の方に中から空けてもらうと、「きれいに書ける人がまだ来ていないので、自分で申しわけない」とのこと。僕はきれいとか汚いとか判らないので、全然かまわないのだが、とりあえず本日の納経一番乗りだ。ヤッタネ。

お寺を出て、駐車場で昨日の残りのパンで朝食を取っていると、車で回られているという大阪から来た4人家族に出会う。僕と同い年の息子さんもいて、かたや一人でチャリンコをこいでまわり、かたや車で一家皆さんでまわっている。改めて現代遍路の多様性を感じた。どういう形であれ全国各地の人によって遍路の文化が続いていくことはいいことだ。四国の人間としてもうれしく思う。

三十四番種間寺入口。太師の銅像がお出迎え。
同じ道を戻り再度種間寺へ向かう。途中で朝お会いした歩きのおじさんに再会。分岐でどっちなのかと迷っていた。僕の説明が解りにくかったみたいですね…すいませんでした…。しばらく行けば案内標識があり、そっからはたぶん大丈夫のはずなのでそこまでの道を全力でお教えする。そんなこんなで7:43三十四番札所種間寺再到着。納経の際に昨晩のお礼を伝える。ここでもまた別の4人家族が参拝に来ていた。ご主人はかなりの亭主関白振りを発揮しておられた。僕もあんな威厳のある父親になってみたいものだ。

続いて三十五番へ出発。種間寺を出たところにすぐ三十五番清滝寺への案内板があるので道を間違えることはない。普通の人なら。何を思ったか案内板を無視するかのように逆方向へ。何故ここで上り坂があるのかと疑問に思いながらも、ひたすら山奥へ入っていく。20分ほど走り続け、さすがにおかしいことに気付き引き返す。なんとか正規のルート国道56号にたどり着き、西へ西へ。さすがに国道なので道幅も大きく道に迷うことはない。途中案内板にしたがって三十五番への道に入り、少し山を登ればすぐ三十五番にたどり着く。普通の人なら。99%見落とすことはないだろう大きな案内板があるにもかかわらず、それをノールックでスルー。はっきり言って、あんなの見落とす方が難しい。世界レベルのテクニックだ。それを天然でやってしまう自分の天才的な方向オンチぶりにむしろ感動を覚えてしまう。5km近く行き過ぎたところで再び山に入って行き、ようやくコレはおかしいと引き返す。引き返してしばらくするとワゴン車に乗るご夫婦に呼び止められた。何でも、とんでもない方向に暴走している僕の姿を発見し、心配して追いかけてきてくれたそうだ。ほんとにお恥ずかしく申し訳ない…。とりあえずどこで曲がったらいいのかを教えていただいたのだが、自転車を車に乗せて麓まで連れて行ってあげるとのお誘いも頂いた。間違えた道を戻る分にはバチはあたらんだろうと言ってもらうが、そこは自分でまいた種なので自分で取り返すしかない。せっかくのお誘いだが、自分の足で回りたいという意思が強いことを伝え、遠慮させていただく。

三十五番清滝寺境内より。土佐市街が見渡せる。
ご夫婦と別れ、登ってきた道を下っていく。三十五番に通じる道への大きな看板をここで発見。細い山道を自転車を押しながら登っていく。途中で若い歩き遍路の方とご挨拶。途中からは歩き専用の遍路道へ入っていく。こっちの方が大分楽だ。かなりの回り道をしたが、10:25三十五番札所清滝寺到着。境内には多くの団体参拝客がいた。そして境内の中央に立っている薬師如来像が目に付く。この像の台座は下が空洞になっており、実は中に入れるのだという。中は光が完全に遮断された闇の空間。大人でも恐怖を感じるという。後でその台座の存在を知ったため、参拝のときには中に入れなかった。絶対いつか中に入りに行こう。

明日は高知の親戚の方の家に泊めてもらう予定になっている。距離的には今から丸1日かければ着かないわけではない。ただ、あんまり夜中にお伺いするのも何なので今日のアタックは昼までにして、あえて予定より丸1日分遅らせることにした。当初の予定では昨日宿泊するつもりだった国民宿舎土佐に連絡を入れると、昼からでも相部屋ならば大丈夫とのこと。長い旅を考えると休足日も必要かなということで、半日ゆっくりすることに。

国民宿舎は三十六番を越えたところにある。三十五番の参拝を済ませ、三十六番へ向かう。県道39号塚地坂トンネル手前に塚地休憩所がある。トイレ休憩をかねて立ち寄ることにすると、休憩所でおばさんに声をかけられる。なんでもお遍路さんに対してここでお接待をしてくれているとのこと。屋根のあるところに案内されて、お茶と和菓子と漬物とバナナをお接待していただく。正直言うとバナナは嫌いで、ここ10年くらい一切食べてなかったのだが、御厚意で頂いている以上断ることなどできないわけで。栄養満点であることは僕だって充分わかってるので、ありがたく一本まるまる完食。10年の歳月が何かしら変化を与えているかと期待したが、僕自身もバナナ自体も10年前と同じだったね…。ちょうどその場で休んでおられたおばあさんがいてお話しすると、自分も昔1度八十八ヶ所をまわった事があるとのこと。四十五番の岩屋寺はその名の通り本堂が岩に覆われているらしく、また本堂には山道しかなく大変だとのこと。参拝が楽しみだが肝に銘じておこう。出発のときに手作りのお守りをいただいた。心からの感謝の気持ちをお伝えし、休憩所を後にする。

県道39号線上に建つ神社。不思議な光景…。
長い塚地坂トンネルを越えて県道39号を進んでいると、県道の真ん中に鳥居が立っている。小さいが祠も建っておりお地蔵さんのようなのが祀られていた。県道もこの道路上の神社を避けるように2つに分かれて通っている。おそらく昔からこの場所に祀られていて、道路をつくる時にどうしようかと考えた末こういう形を取ったのだろう。道中、また別のところで、その土地の御神木であろう大木が同じように道路の中央に立っており、道路が2つに分離していた。地域の慣習と開発の融合が垣間見える風景だ。地域と行政が一体となった街づくり、勉強になる。

三十六番に続く宇佐大橋。実はすでに橋の上です。
三十六番青龍寺は横浪半島の先端にある。今は宇佐大橋を渡ることで、渡し舟を使ったり半島をぐるっと迂回したりする必要はなく、最短距離で三十六番へ向かうことができる。半島を海沿いに走る。海にはヨットが数隻浮かんでいて、開放的な景色が続く。12:20三十六番札所青龍寺到着。山門をくぐると本堂までは長い石段。結構大変。お参りが終われば今度は石段の下の納経所へ。この石段往復はなかなかハード。足に来るわ〜。ここでバイクで回られている男性に遭遇。仕事の都合上、ちょこちょこ休みを取って区切り打ちをしているそうだ。今日はとりあえず次の岩本寺まで行くとのこと。次に遍路に来れるのはいつだろうなぁ、とおっしゃっておられた。やっぱり社会人の方は通し打ちは難しいようだ。改めて、今の自分は恵まれた贅沢な時間の中で旅をしているんだなぁと感じた。

国民宿舎土佐屋上より。
バイクの男性は先に出発されて、お別れ。僕も宿泊予定の国民宿舎土佐へ向かうことに。国民宿舎は三十六番の近くだと思っていたが、かなり山の上にある。確かに距離的には近いが、ひたすら登りなのでしんどい…。汗だくになりながら午後1時過ぎにようやく到着。フロントに予約確認を取ると、まだ部屋の準備はできていないが、露天風呂のほうには入ってもいいよ、と。かなり汗をかいていたのですぐさま風呂に入らせてもらう。露天風呂は眺め最高。山の上にあるだけに太平洋が一望できる。こんな眺めいい露天風呂ないんちゃうかと。極楽気分だ。一緒に入浴していた男性も広島から来て、通しで回っている歩き遍路の方だという。歳は僕の1コ上。今月頭から歩き始めてるそうで、足にマメができて大変だと。僕の場合は、足は今のところ大丈夫で、手のひらに自転車ダコができてしまったが、ちょっと痛い程度。歩き遍路は相当過酷そうだ。

風呂をあがり、部屋の準備ができるまでロビーで待つ。昼食はまだ取っておらず、食べるとなると国民宿舎内のレストランを利用するしかないが、夕飯もここで食べるとなるとかなり出費がかさんでしまう。やっぱりそれなりの値段がするからねぇ、こういうところは。結局2人とも貧乏旅行ということで、夕飯まで我慢することに。

部屋の準備ができたので移動。宿泊する部屋は2段ベッドが4つ並ぶ8人部屋。しばらくすると清滝寺でご挨拶した若い歩き遍路の方が。この方は僕と同い年。北海道の大学に通っており、以前自転車で北海道を縦断したという経験を持つ旅慣れ青年だ。四国を回るのは初だという。若い3人に加え、ご夫婦で車で回っている方と歩きの方、それに香川大学の教授だという方がやって来た。今日は僕を入れてこの6人が同室するそうだ。教授さんに大学はどこかと聞かれ、加えて学部学科まで聞かれたので何だろうと思ったら、娘さんが僕と同じ大学に通っているとのこと。すごい偶然。ふと思ったが、皆さん全国各地から来られているが、今のところ旅を通じて意外に四国の人が少ないような気がする。せっかくすぐそばに「お四国」という秘境があるんだから、皆もっと巡ってみればいいのになぁと感じた。ただ考え方を変えれば、四国の人はお接待する側として遍路の文化を受け継いでいるのかなと。そういう意味では、今日もそうだが自分は四国の人間でありながら色々なお接待を受けている。なんとも贅沢な身分だなぁ。自分が受けたお接待は、いつか未来のお遍路さんにお返ししなければ、という気持ちが湧いてきた。

午後7時頃、さすがに腹ぺこレベルも限界になり、若い衆3人で1階のレストランへ。メニューはいろいろあるけど、やっぱりちょっと高め。高いっつっても1000円前後なので全然大丈夫なのだが、貧乏旅行中の僕にとってはかなりの贅沢。おかわりができるということでから揚げ定食をオーダー。飯を食いながら、3人で旅に来た動機や道中での出来事を色々と語り合っていると、突然僕らのテーブルに瓶ビール2本が運ばれてきた。3人ともキョトンとしていると、ウェイターの方の手の先には同じ部屋の車遍路のおじさんが。なんと生まれて初めて「あちらのお客様からです」をされてしまった。こんなんテレビでしか見たことなかったので、感動。情けないほどの下戸で、酒類は基本的に全般ダメなのだが、飲めない身なりにありがたくコップ2杯ほどいただく。疲れてるせいもあり、これで十分酔ってしまった。それにしても偶然相部屋になっただけなのに、このさりげない紳士的なお心使い。自分もいつかこんなことができるような、素敵なおじさまになりたい。一生に一度はやってみたいなぁ、「あちらのお客様からです」。

食事を終え、ロビーのインターネットで明日以降の天気を調べていると、どうやら明日から天気は下り坂のようだ。しかもしばらく雨が続くとのこと。あんまり天気がよすぎるのも体力的にしんどいので考えものだが、やっぱり雨は嫌やな〜。

本日2度目の入浴。酒が入ってるのでさらに酔いが回る回る。もう眠気MAX。明日は親戚の方に泊めてもらう。初めて会う人なのでキンチョー。

22:00就寝。



  納経    1200円(300円×4ヶ所)

  宿泊    2500円(お接待価格)
  入浴    0円
  洗濯    300円
  移動    なし
  食事朝  150円(ゼリー+パン(昨日の残り))
      昼  0円(バナナ(お接待))
      晩  900円(唐揚げ定食)
  その他  なし


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